火曜日










































機械的なリズムで繰り返される、耳障りな高い音。
広い講義室に響き渡るそれは、教授の話を中断させ、生徒をざわつかせる。音源は結構近くてうるさい。
つーか誰だよ、授業中はマナーにしとけっての。
辺りを見回して、気づいた。

「って、おれのか」

ポン、と軽く手を叩いてカバンから携帯を取り出して教授に謝る。とタイミングよく授業の終りを告げるチャイムが鳴った。
あーぁ。今ので絶対平常点下がったよ。

「もーしもーし」

『遅い!でるのが!』

通話ボタンを押して気のない声で言えば、大音量で怒鳴られた。思わず耳から携帯を遠ざける。

「ごめん。でも、今授業中だったから・・・」

『そんなのどうにでもなんだろ?!あっ、さてはマナーモードにしてなかったんだろ!バーカバーカ』

口を挟む暇もなく吐き出される言葉。機会を通しているのにビリビリおれの身体に響く。おれを支配するたった一人の声。

『きいてんのかよ!彼方!!』

「聞いてる。で、。何の用だったの?もう休み時間終わりそうなんだけど」

『うぇ!それやばい!俺もヤバイ。そうそうあのさ。火曜日さー、一緒にさぼんねぇ?』

「火曜日?」

火曜日、と聞いて瞬時に頭の中で来週のスケジュールを思い出す。
火曜は確か午前2時間で午後の講義もなかったはずだ。今のところ特に予定もない。課題の提出も先週終わった。

「いいよ。何するの?どこか行く?」

『うんそう。ちょっとナンパしに』





平日の昼間からどこの繁華街へ繰り出すつもりなのだろう。と、躍らせた心は鷲掴みで握り潰された。








































「・・・・・・ここ、何?」

「見てわかんない?小学校」

見ればわかるよ、それは。
昼に駅で待ち合わせて、適当にメシを食って、ユルユル電車に乗って、ブラブラの足の向くままに歩いて。
着いた先が夜野城南小学校。下校時間にはまだ少し早いのか、誰もいない校門。
人通りが少ないとは言え住宅地だから買い物に出かけるおばさんとかがちらちら見てくる。居心地悪い。
制服のはもちろん私服のおれ達とっても目立ってます。

「ここで待つ」

校門脇の植え込みにちゃっかりと腰を下ろして落ち着く。
どうやら本気でここが目的地だったらしい。

「誰を?」

「青柳立夏」

聞いた事はない。けれど、苗字に何か違和感を覚えた。

「清明・・・BELOVEDの弟なんだってさ」

「へぇ」

あぁ、だから。
青柳清明。が大嫌い、と本人に面と向かって罵って憚らない人物。おれもあいつは嫌いだったが。
確か結構前に死んだんじゃなかっただろうか。ななつの月が処刑の決定を下したとか下さないとか。

「そんな子に会ってどうすんの?闘う?拉致る?ナニカの任務?」

「任務じゃないよ。でも、将来的には俺らに回ってきてもおかしくないかな。今んとこ負けっぱで、今度渚先生がゼロ使うって意気込んでた」

「ゼロ、ねぇ。強いんだ。えっと、立夏?」

「いやぁ、あれは戦闘機のおかげかなぁ。立夏自身の戦闘機はまだないんだけど、代わりに草灯がついてる」

そーび。我妻草灯か。律先生のお気に入り。ていうか、あの人は、

「BELOVEDの戦闘機じゃん。名前が違うだろ」

立夏の名前は知らないけど、BELOVEDじゃないのは確かだ。草灯。こいつは清明のものだ。
サクリファイスが死んだのに、新しいのを見つけるなんて、

「信じらんない」

「言うと思ったー。まぁ俺も実際会ったわけじゃないけどさ、情報は確かだよ。なんたって7さんに聞いたんだから」

「へぇ」

サクリファイスは何者とも代えることはできない。おれ達戦闘機を支配してくれる、誰よりも近い存在。
神にも等しく、命よりも大事。それを、死んだからって取り替える。おれには耐えらんない。

「彼方ー?どうした、怖い顔して」

下から伸ばされる細くて冷たい手。それを無くすことが何よりも怖い。おれが死ぬことよりも、ずっと、ずっと。
乱暴に手を握ると驚いた顔をして、少しだけ笑った。
死なせてはいけない。傷つけることすら許さない。おれが護る。

「ダーイジョーブ。今日は戦闘ないし。尻尾出さなきゃ気付かれねーよ。だからシステム閉じとけ?こわーいオニイサマに怒られちまうから」

「・・・・・・はい」

冷えた手を温めながら数分も待つと、ちらほら子供たちが出てきた。授業が終わったみたいだ。
門の横に立つ明らかな不審者を横目に歩く子供の波の中からは立夏を探す。
キョロキョロ耳つきのガキどもの中からたった一人の目的の人物を見つけるのは大変だろうが手伝うことはできない。
だって立夏の顔知らないし。

「あ、立夏!!」

「いたの?」

結構早く見つかった。
ブンブン子供みたいに手を振る。それに駆け寄ってくるのは黒い髪に同じ色の耳と尻尾の少年。途中で友達と別れて走ってくる。

「!・・・サン!」

「やー立夏。コンニチワ」

「どうしたの、こんなとこで」

「近くまで来たから寄ってみました。迷惑だった?」

白々しいなぁ。ウソつきだし。本当は学校午後丸投げで来たんですよー立夏くん。

「そんな事ない!時間ある?オレと思い出作りしよっ!えっと、・・・こっちの人も!」

目をキラキラさせて話す立夏は、ずいぶん前に見た清明の面影と重なった。
結構似てる。つーか、頬染めちゃってかわいいかわいい。

「あ、紹介まだだったね。こいつ彼方。俺の相棒?みたいなもん」

「沢城彼方です。よろしくね、立夏くん。彼方、って呼んで」

「青柳立夏です!よろしく!」





握った手は、小さくて柔らかだった。








































050612
火曜日さー、一緒にさぼんねぇ?


補足。
今回でてきたオリキャラの沢城彼方君は主人公の戦闘機です。
誰かすでにいるキャラとペア組ませようかなぁ、とかも考えましたが、なんだか無理っぽいのでやめました。
読み方はサワキカナタ。サワシロではないです。
名前変換はできないです。ごめんなさい。








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